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現代の生き方のヒント
「PLOTTER MAGAZINE」プレ創刊号
[Interview No.001]

さまざまな世界において活躍する「PLOTTER」の行動力は創造性に溢れています。

「PLOTTER MAGAZINE」は、彼らの考え方や価値観を通して、過去から今までの歩みをたどり将来をポジティブな方向に導く変革者たちを応援します。

私たちが創るツールと同じように、ここに紹介する「PLOTTER」の唯一無二の物語が、みなさんにとって、“今”という混沌とした時代の生き方のヒントになれば幸いです。

今号は2019年7月の本誌創刊に先駆け、プレ創刊号としての配信となります。
記念すべき
Interview No.001のPLOTTERはノザイナー代表「太刀川英輔」さんです。

『固定概念と言語学と進化と逆境の話』

――幼い頃はどんなお子さんだったのでしょうか?

一言でいうと、金物屋さんとプラモデルと自由研究に生きている少年でした(笑)。小学2年生の頃から金物屋に通っていて、キラキラした素材がズラりと並んでいる光景に胸をときめかせたり、壊れてしまった別々のプラモデル同士を接着して組み合わせて新しいものをつくったり、タミヤのギヤセットを駆使してリモコンで動くロボットをつくったりということをひたすらやっていました。その頃に、親にNECのPC-98というパソコンを買ってもらったのは、今でもとてもありがたいことだったと思っています。父が建築士だったので、物心がつく前から建築を格好良いと感じていて、その影響もあり、ペイントソフトを使って図面を描いたりしていました。

――当時から工夫して何かを生み出すというか、地でカスタムをやられていたんですね。

あと、粗大ごみの日に街を練り歩くのが好きでしたね。小学生なのに部屋には拾ってきたテレビ二台とフィットネスマシンがありました。当然、壊れているから捨てられてしまっているのですが、意外と中を開けて埃を取ったりすると復活するんです。ごみが価値に変わるのが子ども心に面白かったんだと思います。

――価値・機能を蘇らせたり、別のものに変えるという行為は、現在のデザインを媒介に別々のものを繋げたり、見方を変えたりするお仕事と関係しているように思えます。

ごみが宝物になったり、価値が生まれる瞬間を、考えたりすることがずっと好きだったのかもしれません。実は活かされ切れてない、もったいないものを組み換えることに興味があったともいえるでしょう。

――慶應義塾大学大学院在学中の起業のお話をお聞きしたいのですが、はじめから起業するつもりだったのでしょうか?

もちろん建築家になるつもりでいました。ただ、本気で建築について考えていたら、どこからどこまでが建築なのかわからなくなってしまったんですよね。それから、グラフィックもプロダクトデザインの分野を独学しました。当初はクライアントなんているわけがなく、仕事もやったことがない。もちろん建築の仕事がいきなりあるわけもない。それで、試しにデザインコンペにひたすら応募してみることにしました。そうすると連戦連敗。5連敗くらいして、自分には才能がないのかもしれないと思っていた時期に、あるコツに気づいたんです。そのコツとは「伝わりやすさ」でした。そこから勝率がものすごく上がりました。この経験があって、デザインとは何かを解明することが僕のテーマになりました。デザインは、対象と関係を紡ぐ言語性をもっている、だとすれば言語学からデザインが解明できるかもしれない、と気づいたんです。その頃、大学院では隈研吾さんのところで学んでいたのですが、この言語とデザインの関係が面白いと思うようになって、「デザインの言語的認知」という論文を書いて卒業しました。この論文ではアイデアやデザインの背景にある「文法」を解明することに挑戦していて、実際にこの内容を応用すると、「たとえ話」の文法を使えば「見立て」からデザインを考えたり、「誇張」の文法を使えば極端な状況を想像しやすくなる。アイデアはスムーズに出るようになるし、良いデザインの判別が容易になります。それを「デザインの文法」としてメソッド化しました。

――先ほどのゴミや壊れたプラモデルを蘇らせたり、別のものに変換するといった話と近しいですね。無価値と思われてしまったものを解体し、別の役目を与えるというか。それを以前は“地”でやられていたけど、今は分析ができる。

そうですね。最近、さらに発想法を発展させて「進化思考」という別のメソッドを作っています。適切な形態を選び取る知は、人間だけでなく生物の進化の過程にも見られます。その知を学ぶことで、発想を助ける手法です。例えばコウモリの羽。レントゲンを見ると、あれは実は指で、ネズミの指が長くなってあの形になっていることがわかる。こういった部分を拡張させるという手法は、文法と同じように発明やデザインにおいても機能します。進化コストが低い、と僕は言っていますが、形や構造を大きく変えずに、良い関係が生まれることが美しいと思うのです。“PLOTTER”もその考え方の延長にあるといえるでしょう。記録から思考へ、というコンセプトのもと、既存の技術だけで新しい関係を生み出しているわけですから。進化コストをかけない一方で、伝達する対象との関係は劇的に変わらなければならないことが重要なポイントです。ネズミが羽を得たことで、今まで行けなかったところに行けることが可能になったように、今まで使っていなかった人に興味を持ってもらう工夫が“PLOTTER”にはたくさん仕掛けられていて、事実、多くの新規ユーザーに愛してもらっているようで嬉しく思います。

――太刀川さんは“PLOTTER”のアートディレクションをされていますが、そもそもどういったコンセプトだったのでしょう?

スマホが台頭してきたことで、記録のための道具はそちらに急速に移ってしまいました。だからシステム手帳のダイアリーが売れなくなってしまった。一方で、ノート市場全体で見れば完全にスマホに負けているというわけでもない。その理由は、思考の道具としての手書きツールはまだ健在だからです。レオナルド・ダ・ヴィンチ然り、人間はずっと昔から紙にペンで何かを書き/描き、思考を拡張してきました。記録の置き換えはクラウドが担えるけれども、思考のためのノートの役目は今でも変わらないし、むしろ以前より求められているはず。紙とペンは自分の思考を一度構造化して俯瞰できる、思考のためのツールとして優秀なんです。“PLOTTER”は、最高の思考のツールを目指すためにつくられたブランドです。

――“手書きが好き”というのは、ある種の情だと思うのですが、それを超えた機能がある、と。

そう。物理的なものは思考を刺激します。そうやって思考を高めて、新しいアイデアを作り出す人を応援したいんです。皆、今あるものが当たり前だと思い込んでいるけれども、100年後も同じ形で残っているものはほとんどないでしょう。いま存在するデザインのすべてが未完成のはずなのです。僕が考える「PLOTTER」とは、常識をくつがえすアイデアを生む変革者を指しています。不安定な時代を良い方向に導く変革者たちが一人でも多く’生まれてきてほしいし、そういった人たちを僕は応援したい。“PLOTTER”がそういう人の道具になることを祈っています。

[太刀川英輔 ・ NOSIGNER]

1981年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。2006年にデザインファームNOSIGNERを設立。ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を生み出すことを理念に活動中。