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Feature

PLOTTERの革を語ろう
「Liscio編」

前回の「Pueblo編」でもご紹介したその故郷であるタンナー『バダラッシ・カルロ社』。イタリアの中部に位置するトスカーナ州ピサ県の街サン・ミニアートにそれは佇む。ぶどう畑が点在するこの田舎町は文字通り、イタリアで起こった食や農産物、生活・歴史などを大切にし、個性あるまちづくりを目指す“スローシティー”加盟都市である。

先述の通り、ぶどう畑はもちろんオリーブ畑などの緑が映える丘が広がるサン・ミニアートのアルノ川に近い場所。ここにこのタンナーはあるわけだが、その街並みを一見すればなるほど、あの美しい革を作ることができる所以が確実にあった。『素晴らしい環境は間違いなく魅力的な革を作り出す』ということだ。

素材感を全面に打ち出し、その荒々しささえも味わいとして表現しきった「プエブロ」がある一方で、ある意味そのベース素材とも言える「リスシオ」ももれなくバダラッシの代名詞と称していい革。ちょうどこの革をこなしてシボ感を出した革が「ミネルバボックス(※牛ショルダーをバケッタ製法と呼ばれる伝統的な革の鞣し方法で作り上げたシボの風合いが特徴の革)」にあたる。「リスシオ」の正式名称も「ミネルバリスシオ」と言い、“リスシオ”とはイタリア語で『滑らかな』を意味する。

フランス産原皮を一枚一枚丁寧に時間をかけて鞣し、牛脚油をたっぷり染み込ませ、透き通るような色合いに染色したリスシオは、プエブロとは異なり、一切の表面加工は施さない真っ向勝負の革。だから、牛が本来持っていたシワや血筋や傷痕さえもそのまま露わに。それだけに原皮の厳選は怠らないが、どんな個性であろうとそれが革らしさ!ということですべてを受け入れられる本革中の本革でもある。もしこれがあらゆる特徴を隠すべく、革の表面に二次加工を施し色の膜をかけてしまったら、この革の醍醐味であるダイナミックなエイジングは二度と楽しめないであろう。

自己主張が激しい一枚革との出会いは一期一会。そう考えれば様々なレザーキャラクターも愛おしくなるというもの。経年変化も使う人次第で際限なく成長していくところがまた面白い。これは云わば道具の原点でもある。使う人の手になじみ、応え、ともに育っていく究極の「リスシオ」ワールドを堪能されたい。