HOW TO USE “PLOTTER”
2017年の9月にPLOTTERが登場して早いもので4年が経った。
それまでシステム手帳という名称で語られてきた6穴リングの世界。PLOTTERはそれと一線を画す意味でこの道具をそう呼ばず「レザーバインダー」とし、ある意味グローバルにでも認識できる実にシンプルな名を冠した。
それはなぜか?
1980年代に一世を風靡したシステム手帳の世界。今のようなデジタルツールは多くなく、太いリング系の革製手帳に紙リフィルはもちろん計算機に至るまであらゆるツールをオールインワンで“綴じ”込めたヘビーなツールを持つことが、ある意味仕事ができる人の象徴だったりもした時代だ。
それから40年の時を経た現代の人の手に必ず握られるモバイルツール。これさえあれば!という究極の道具は人を病みつきにさせ、それを一瞬でも携帯しないと不安にさえ陥るような必須アイテムとなった。当然、それと同じような役目を担っていたシステム手帳は一時期化石化し、もう二度とその姿を見ることさえできないのでは?という危惧を抱いたほどだ。
ところがどうだろう、ここ数年、このシステム手帳を取り巻く界隈は以前のブームとはまた違った形で盛り上がりを見せている。“違った形”というのは、40年前はビジネスツールとしてのそれだったわけだが、今となっては使う人が実に幅広い想像力でそのキャパシティを超えるような愉しみ方を見出している。
DIYという言葉が普通に語られるようになって久しいが、ノートパソコンや携帯などのデジタルツールを持つことが仕事においてや日々の生活においても当たり前となる中で、それとは真逆のスローなモノづくりを味わう人々。そこには、人が絶対に捨てられない“アナログ”の潜在能力が垣間見られる。
しかしながら、デジタルツールは人が生きるうえで(ある意味人という存在さえもシステムの中に組み込まれてしまっているわけで)もう切っても切り離せないインフラと化しているのは事実。アナログツールを嗜む人でさえ、一部では、いや大部分でその利便性を享受してることは否定できないであろう。要するに、これがないと生活ができない、のである。
一方で、本来はアナログ世界で生まれてきた生身の人間にとっては、デジタルの世界が加速させる時代の変革やそのスピードに追い付くことに必死で、そうしたあっという間に過ぎ去る日々に若干疲れを見せ始めている状況もここへきて感じるのは私だけだろうか。
必要な情報が散らばってしまいそれを簡単に得られなくなりがちなパンパンのアナログツールだとしたら、それはあまり現代的ではないが、必要な情報を、必要最低限の非デジタルな道具で携えることも、この時代に生きる人々にとってある意味“必須”なのでは。と言うのも、「アナログ回帰」という完全な形はフィットしにくい現代世界ではあるけれども、テレワークが普通になりつつある中でパソコンの手前にあるのは紙とペンだったりするケースは多く、やはり情報を取得或いは送付することを得意とするデジタルツールを使いこなす以前に、それらと共存しながら、瞬時のメモ機能としてはもちろんのこと、ひとりひとりのアナログな動作と電力が要らない道具の連携から突然湧き起こる「閃き」の価値には代えがたいものがある。すべてのアイデアはこうした人間らしいスピード感から生まれるような気がしてならない。
PLOTTERは、今まで増殖し尽くしたと言っても過言ではないアナログツールの、いやシステム手帳の世界を一旦リセットし「これだけでいい!」というHOW TOを提唱することを決意し、あえてリフィルも必要最低限しか挟めないようなリングの細さで、超絶にシンプルな1枚革の「レザーバインダー」という新境地に挑んだ。AIがあらゆる環境において台頭するこれからの時代において、私たち人間がそれにも勝る“ヒラメキ”脳を生み出すための創造力を獲得するには、環境も道具も、時に人間らしく情緒的且つ、時に思考を拡げるための余白をいくぶん残したシンプルさを追求することだ。
今になってアインシュタインの言葉が心に響く・・・
Everything should be made as simple as possible, but not simpler.
ものごとはできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない。