eyecatch
Feature

日本のクラフトマンシップが生み出した
PLOTTERのペン

紙は西暦200年に発明された、言わばその当時のテクノロジー。ではそれに書くための筆記具はと言うと・・・人類が恐らく言葉より前にコミュニケーションのためのツールとして手に持った1本の棒切れだったに違いない。そんな道具の原点に想いを馳せて仕上がったPLOTTERのボールペンとシャープペン。その究極にシンプルなペンが生み出された背景には、飽くなき探求と進化を続ける日本のペン職人たちとタッグを組んだ本物の開発ストーリーがある。

それを持つ人とともに時を刻み、馴染む道具を創ることはPLOTTERの使命。それに違わぬペンを実現するためには“真鍮”素材であることは必然だった。手にした時の絶妙なバランスと重厚感という唯一無二の体験を味わって欲しいから、真鍮の素材選びにも妥協を許さない。

素材である真鍮の棒はそのツルッとした表面を主張しながらも、大人しく上品な佇まいで工場の壁に立てかけられていた。そしてふと考えた。この光沢は実に美しいけれど、果たしてそのままペンのボディにしてしまったらどうだろう?と。鏡面仕上げのそれは一度握った手からきっと滑り落ちてしまうであろう。私たちは決断した。ペンの全身に“刻み(ローレット加工)”を入れようと。聞くと、所謂筆記具の世界では全身にローレットを入れることはそうないとのこと。しかも、普通作らないからそれを実現する冶具もないと。一般に店に並ぶペンたちはグリップ感を意識して、ペンの先端部分にだけ刻みを入れる傾向にある。しかもその方がコストが安くて済む。でも実はどうだろう、ペンを使う人にとって指先だけのグリップ感を良くしただけで、本質的な使い易さを提供できているのだろうか。ここから生まれたのが全身にローレット加工を施すという挑戦。人はシチュエーションにより、気分により、はたまた一人一人の握り癖により、さまざまなペンの持ち方をするだろうという発想から、無理を言ってオリジナルの冶具も作ってもらいこのデザインと加工に踏み切った。それは、真鍮による金属の重心バランスはもちろんのこと、まさに全身にグリップ感があり、どんな握り癖にもフィットするペンを可能にした。ヘビーな真鍮棒にメカを挿入するための空洞がくり抜かれ、幾何学的なダイヤ模様が刻まれていく様はまるで職人が彫刻を施していくかのよう。自分の年齢よりも遥かに長く活躍しているかもしれない年季の入った機械と会話するように、それを繊細に、ベストな状態で動かしていく光景はまさに日本が誇る職人技であった。

文字や数字を書く時、その瞬間の筆跡がオンタイムで追える安心感は確かにある。細かな方眼の枠の中に描かれる線、それが然るべき位置に収まっていること。当たり前ではあるけれど、当たり前のことができているペンは世の中にどれくらいあるのだろうか。自然と視線がペン先に行くように、ペン先パーツのなだらかなカーブにこだわり抜いたデザイン。幾度も図面を引き直し、やっと得られたPLOTTERなりの黄金律を形にするマイスターたちの技には息を呑むよりほかない。0.01ミリのピッチで丁寧に答えを出していく姿には感動すら覚えたどちらかというと鋭角的でシャープなイメージのあるPLOTTERのペンだが、このほんの1.5センチほどの長さの先端がアナログの道具としての柔らかな心地良さを与えてくれる。ペン先まで目線を切らないように微調整された削り出しの角度のリアリティは職人技があってのものだ。

ペン先と同時に、書く時に目が行くところはどこだろう。そう、ペンの先端と真逆であり、紙から一番遠くに位置する天冠部分だ。視覚は最も創造力を膨らます五感のひとつ。中央から同心円状に湧き立つスピンヘアラインの天井には、究極にシンプルなデザインではあるけれども、ただでは終わらないPLOTTERの開発スピリットが込められている。デザインにおいて美しさはある意味“正義”。書く道具として本質的でありたいという想いはもちろんのこと、それを見て、触れて、「プロッターたち」の内に眠ったクリエイティビティを解放するような筆記具の世界を創り出せたらどんなにか素敵であろう・・・