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Feature

Water Story for PLOTTER
:leather edition

「水はすべての原点 その2」

革を作るなめし工場を“タンナー”という。なめしは英語でtan(タン)と言い、なめす工場だからtanner(タンナー)。日本語もよく出来ていて“なめす”という漢字は、「革」に「柔」と書いて“鞣す”。まさに、動物が生きた証の「皮」を柔らかく使いやすくして「革」にするという工程を見事に一文字で表してしまった。

そのタンナーを訪れるたびにヒノキで作られた巨大な樽の香りが私たちを迎えてくれて、それがなんとなく懐かしく実に心地が良い。人が旅先でヒノキ風呂に癒しを求めるように、私たちが手にする皮革も熟練の職人技で丁寧に作られたヒノキ製の回転樽でじっくり鞣されることできっと味わいが出てくるのであろう。

事実、海外のそれこそ超巨大なタンナーなどでは毎日大量の皮革を製造しなければならず、それに耐えるために鋼鉄製の樽を使用しているケースが多いが、どちらかというと風合いを求めるというよりとりあえず革であればよいという現場を目の当たりにしたことがあった。

その点、日本のタンナーは大量生産は海の向こうに任せておいて、ヒノキの樽に象徴されるように、時間とコストはかかるけど施設や道具からもちろん皮革に至るまで自然のもので手作りという、いい意味で昔ながらの伝統技術をいまだに継承しているところがたくさんあり、結果日本、いや姫路ならではのオリジナリティー溢れる味わい深い素材が生まれるというわけだ。

そんな鞣しの現場はもれなく河川敷に集まっており、製紙工場同様こちらも大量の水を必要とする。紙のトピックの時もお話ししたが、土地ごとの水質により仕上がる紙の品質が異なってくるのと同じく、革においても姫路という限られた地域においてさえ東と西では山から流れてくる水質が硬水か軟水かで分かれているようで、服向けなのか、靴向けなのか、バッグ向けなのか、財布向けなのか・・・それぞれの特性を引き出す水質の地区でタンナーの個性が育っている。

この大量の水はどこから来るといえば地下奥深くから湧き出てくる地下水。数年かけて山に降った雨水が河川を流れ地中に浸み込み十分濾過された水はもうそれだけで綺麗なわけで、この上質な水があってこその革製品なのである。PLOTTERのレザーバインダーに使われている「ホースヘアー」と「シュリンク」ももちろん姫路製。日本の最高級の皮革を生み出す場所で、PLOTTERたちのための個性あふれる“こだわりレザー”は今も創り出されている。