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Material

“頭張り”というひと手間が生み出す
味わいの世界

前回に引き続きPLOTTER渾身のオリジナルレザー「ホースヘアー」のお話。

実はこの革は手間がかかり過ぎるくらいかかっている革です。一回で済む鞣し工程を二回行うことで革の風合いを最大限に引出し、そこに馬の鬣(たてがみ)を模ったエンボスを押してナチュラルでありながらモダンなテイストを醸し出していますが、ここで終わらないのがPLOTTERのこだわり。エンボスの柄をさらに惹きたてて深みのある表情にするために、“頭張り(アタマハリ)”という工程が最後に待っています。

この“頭張り”という言葉ですが、まさに業界用語。革を作るタンナーでは普通に使われている言葉なのです。エンボスで現れた革の表面の凸凹の凸部分を「頭」と言い、その「頭」面を専用のオイルなどを使い擦りながら塗布していく作業を「張り」と言います。

これを行うことでどんなことが起きるかというと、頭部分は摩擦に加えオイルが塗りこまれることにより自然に焦げていき、エンボスの谷部分である凹面は擦れないためもともとの革の表情が淡く残り、同じ色でも美しいツートンが浮かび上がってきます。このナチュラルなカラーコントラストをコントロールするのももちろん職人の腕。一枚一枚個性ある風合いに仕上がったエンボスレザーを目の前にして、オイルが入りやすい部分と入りにくい部分を瞬時に見抜き、一枚の中でも塗布する分量と圧力を変化させています。また、暑い時期はオイルが浸透しやすく、寒い時期は浸透しにくいので、加工時の気候や手の温度なども職人の勘所に大きく影響しています。

風合いが命の100%植物タンニン鞣しの革は高度な職人技に正直に応えてくれますがその分加工が難しい革でもあります。そんな非効率な革に真っ向勝負で挑むスピリットはPLOTTERのものづくりに対する姿勢そのもの。これからも、素材探しはもちろん、いかに味わいある本物のプロダクトに仕上げられるか、加工やつくりに妥協は惜しみません。

「“頭張り”で浮かび上がった美しいツートンは高度な職人技があってこそ」