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現代の生き方のヒント
「PLOTTER MAGAZINE」
[Interview No.005]

さまざまな世界において活躍する「PLOTTER」の行動力は創造性に溢れています。

「PLOTTER MAGAZINE」は、彼らの考え方や価値観を通して、過去から今までの歩みをたどり将来をポジティブな方向に導く変革者たちを応援します。

私たちが創るツールと同じように、ここに紹介する「PLOTTER」の物語が、みなさんにとってのクリエイティビティのヒントになれば幸いです。

5人目となるInterview No.005のPLOTTERは、鎌倉でコワーキングスペース「Think Space」を経営する 、代表の岩濱 サラさんです。

 

『世の働く人のために、東洋的な自然の摂理を空間を通して提供したい。』

心地が良くて、静かで、しっかりと集中できる空間を求めている都市生活者は、間違いなくとても多い。ネット環境が整い、PC やスマートフォンさえあればどこでも仕事ができてしまう。働き方が多様化するにつれ、会社に行くことが絶対ではない時代に突入している今、日本でも増え始めているコワーキングスペース。 空間を複数人でシェアし、相互作用を狙った場所だ。渋谷を起点にすると、片道1 時間半弱。都会のど真ん中からそう遠くはない鎌倉市の稲村ガ崎に、一昨年オープンした「ThinkSpace」。 日本建築を改装してつくられた、こじんまりしたコワーキングスペースだ。木造の建物、小上がり、畳に囲炉裏……。日本人に馴染み深いもののはずが、今となっては珍しくなってしまった和の要素がここには未だに残されている。

海を背にそこへと向かう道中は自然に囲まれたひっそりとした住宅街。 喧噪とは真逆といって良いほどの落ち着いた空気が漂う。日本を代表する哲学者の西田幾多郎は晩年、そのあたりで余生を過ごしたという。「ThinkSpace」を立ち上げた岩濱サラさんに、お話を伺った。

 

――そもそも、どういった経緯で「Think Space」を立ち上げることになったのでしょうか。幼少期からを振り返りつつお話いただければと思います。

父はパッケージなどのデザイン関係の仕事をしていて、母が仏教美術を教えていました。米軍ハウスに住んでいたので、外国人が周りにいるのは日常でしたし、パキスタンやブータン、イギリス、フランスなどに1ヵ月くらい長期滞在したり、海外旅行に連れて行ってもらったりすることが多かったので、幼い頃からいろいろな文化に触れる機会が多い環境でしたね。人はみんな違う、人と同じではつまらない、と小さい頃から漠然と感じていました。遊びはもっぱら姉と一緒にやっていた工作だったり、自分たちの秘密基地を見つけては冒険を楽しんでいたりと、そこから生まれるワクワク感がとても好きでした。そんな日々を過ごしていたので、わりと活発な子どもだったと思います。 あと、小学校の頃からずっと算数が特に好きで、大学でも数学を専攻しました。最初に就職した会社がIT 関係で、非接触デバイスの導入や構築をコンサルティングしたり、商品化したりする企画の仕事をしていました。

数学的な延長でプログラミングやコンピューターで創っていく世界にも興味があったものの、実際には自分の心が動くものではありませんでした。そこからしばらく、どういう道に自分が行くべきなのかという悩みを抱えるようになりました。

 

――ご両親のお仕事やご自身のさまざまな経験から、自己表現をする道も考えられたように思えるのですが。

それによって悩みから解き放たれるというか。確かにそれでも良かったのかもしれないですが、一方で社会に貢献したいという想いも強くて。小学生のとき、マザー・テレサにとても影響を受けたのです。 それから自分の存在や自分が行うことが人の役に立つかどうかということに重きを置くようになりました。ただ、それだけではもの足りないとも思っていたので、自分と社会との接点、互いのバランスの取り方に悩まされていましたね。その後は、不動産関係の仕事に就きました。なぜなら、学生のとき、直島にある安藤忠雄さん建築のベネッセハウスの強烈な印象が残っていて、人の生活の豊かさに関わる建築空間に興味を持ったからです。建物の造形でこんなに心が揺さぶられ、ただそこにある自然が美しく見えるようになるのか、ということに気づいて。当時は、空間設計だけでなく、住まいや街づくりについても考えてみたいという気持ちが強かったので、ディベロッパーなどでマンションの開発や営業、投資不動産の仲介などに携わっていました。不動産開発に関わる中で、スクラップアンドビルドではなく、空間に刻まれた歴史をどうコーディネートしていくか、社会にあるものをどのように生かせば、人の生活が幸せになるのか、と考え始め、「Think Space」を立ち上げました。人も自然の一部分として共生するにはどうしたら良いか、と考えたときに不可欠だったのが、都会とは異なる、自然に寄り添える豊かな環境に位置していることでした。

 

――この建物はどんな状態だったのでしょうか?

陶芸家の方が別荘として使っていた建物でした。2階は宿泊スペースを新設しましたが、1階に関しては元々の良さをなるべく残したくて、壁や天井を塗ったり、土間にカウンターを設けた程度。間仕切りもせず、ソフトなソファを床にいくつか置いて、ひとりで集中することもできるけれども、他の人とも時間、空間を共有できる。近過ぎず、遠過ぎない繊細な日本人の性格、心地良さを意識して構成しました。機能ごとに意味づけされた空間を、合理的に組み立てていく西洋的建築に対し、古来の日本建築は人のふるまいや自然との調和を大切にしながら、大工さんの経験や感覚に基づき、ひとつの形に仕上げていきます。

そういったアプローチの方が、実はクリエイティブな余白が生まれやすいのだと思います。私がこだわったのは空間を隔てず、全体として無理なく繋がるつくり。東洋的な自然の摂理や心身に寄り添った空間を提供したいということが根本としてあるので、他のコワーキングスペースとは入り口がそもそも違うのです。

 

――「Think Space」の利用者の方はどんな業種の方が多いのでしょう? また、どういった声をもらうことが多いですか?

会員の方の半数は鎌倉近辺にお住まいの人なのですが、東京や横浜といった都会からいらっしゃる人も多くいます。業種はフリーランスでコンサルタントや株のトレーダー、執筆家、会社経営者などさまざまです。チームでいらして、合宿形式でミーティングをされるという人もここ最近は増えてきていますね。はじめはくつろぎ過ぎるのではないかと、やや不安視する方もいらしたのですが、実際に一日過ごすと、緩んだ後にスイッチがしっかり入って、とても集中できたとおっしゃっていただくことが多いです。

 

――確かに、オフィスの作業場の延長で会議室に入っても、なかなか切り替えができないですよね。

鎌倉は海、山があって、お寺も点在しています。そのおかげで目に見えない良い気が流れているところも影響しているかもしれません。

 

――紆余曲折はあったと思われますが、幼少期から続く一貫する想いが実った結果が「Think Space」と言えるかもしれないですね。

回り道をしてきましたが、私にとっては全て必要な要素でしたね。

 

――最後に岩濱さんにとっての「PLOTTER」とは、どんな人間像だとお考えでしょう?

人生を楽しむために仕事をする人。そして、いつも自身の心の変化に気付ける人でしょうか。 自分を抑え込んで頑張ることが美徳ではなく、細部まで俯瞰してみて、今の自分にとって自然な要素をつなぎ合わせていくことが大切なのだと思います。

 

【岩濱サラ ・ Think Space代表】

1981年、神奈川県生まれ。
Think Space代表、マインドフル空間コーディネーター、一級建築士、宅地建物取引士、リノベーションプランナー
学習院大学理学部数学科、京都造形芸術大学建築デザイン卒。 IT企業でのシステム開発コンサルタント、不動産ディベロッパーにおける居住用、投資用不動産の開発営業を経験。 その後、「空間・生活・つながりの再構築により、幸福度の高い社会をデザインしていきたい」との想いから起業。 東京と鎌倉の二拠点生活を送りながら、自然に囲まれた静かな環境の中で、集中力や創造性を高め、マインドフルに思考するコワーキングスペース『Think Space鎌倉』を2017年にオープンした。「 ひとりひとりの人生をもっと輝かせる幸せなワークライフ」の実践。健康経営プラットフォーム『Health Quest』や新しいワーキングスタイルを提案する『WORKATION Shonan』を立ち上げ、「働き方」「心身の健康」「自然環境・地域資本」の切り口から、健康で豊かなワークライフの推進を目指している。

HP thinkspace.jp

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